現在のロケットは、重量の約8割を酸化剤(酸素)が占めています。より効率的な宇宙輸送を行うため、大気中の空気を取り入れて酸素の代わりに燃焼させることでロケットを大幅に軽量化させる技術が昔から研究されてきました。空気を取り入れるロケット・エンジンをエアーブリージング・ロケットエンジンといいます。

空気液化サイクルロケットエンジン(LACE)

取り入れた空気を燃料である液体水素によって液化し、酸化剤として利用するロケットエンジンです。

1948年に米国において発明され1960年代にスペースシャトルの推進システムの候補として試作・燃焼実験が行われました。取り入れた空気を燃料の液体水素で液化した後、酸素分離器で窒素と酸素を分離し、液体酸素のみを燃焼器内で液体水素と燃焼させるサイクルとして研究され、必要な酸化剤を全て空気から取り出した液体酸素で賄おうとしていたため液化量が足りず、酸素不足で十分な性能が得られなかったことから採用されなかったようです。

その後、日本にて、従来のロケットエンジンに液体水素にて液化した空気を液体酸素と混入して比推力の向上を図ることが研究されてきました。米国での研究と異なりタンク内の液体酸素を併用することでその欠点を補っています。(日本型LACE)

予冷ハイブリッドエンジン

イギリスのリアクション・エンジンズ社が開発中のSABREロケットエンジンの仕組みです。1980年代に始まったLACE設計を発展させたものとされています。

低速/低高度では大気中の空気を利用し、高高度ではタンク内の液体酸素を使用します。流入する空気を-150℃まで冷却することができる熱交換器を備え、これによりエンジン効率を向上させています。

スクラム・ジェット・エンジン

吸入した空気を圧縮して燃料を燃焼させることにより、エンジンを駆動する出力をえるエンジンです。インテークから吸入された超音速の空気を超音速のまま燃焼させます。マッハ5~マッハ15までの広い範囲で高いエンジン効率が維持されると期待されていますが、超音速機龍内で燃焼を維持させなければならないため技術的難易度が高いとされています。

エアターボ・ラムジェット・エンジン(ATR)

ラムジェットとターボジェットを複合した推進システムであり、亜音速域から超音速域(マッハ6程度)までの広範囲の飛行が可能で、自立発進ができることから、二段式宇宙往還機(スペースプレーン)の初段の使用を目的に研究されています。

ATREX

日本の宇宙科学研究所でエキスパンダーサイクルを採用したエアターボ・ラムジェット・エンジンの一種であるATREXの開発が行われています。

予冷ターボジェットエンジン

従来のジェットエンジンではマッハ5以上の極超音速で飛行するとコアエンジンに流入する空気の温度が上がりすぎ、圧縮機やタービンが高温に耐えきれなくなることから、流入してきた空気を冷却器(熱交換器)を通して冷却することで高速飛行を可能としたジェットエンジンです。極超音速旅客機または二段式宇宙往還機(スペースプレーン)の初段での使用を目的に研究されています。